安田 猛 さん


愛すべきペンギン 安田 猛 投手
一級葬祭ディレクター 野口昌子が聞く 著名人人生のしまい方

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現在ヤクルト球団編成部部長、2軍選手の面倒を見たり、ドラフトで入ってくる選手を受入れる為、何名かの選手に引退を勧告する大変なお役目をされています。
安田さんというと<いしいひさいちさん>の「がんばれタブチくん」でゲジゲジ眉毛とペンギンのような体型、ユニークなキャラクターで登場したヤスダ投手を思い浮かべる方が多いと思いますが、お会いすると58歳とは思えないほどお若くて、当時よりもスリムで優しい目をされているとても素敵な方でした。でもあの漫画のヤスダ投手の愛すべきペンギンのイメージどおりでもありました。新人王・2年連続の最優秀防御率のタイトルを獲得された大投手とはとても思えない、気さくで何の驕りもない誰からも好かれているという印象を受けました。スターになってもサラリーマン生活の大切さを忘れたくないと、オフは明治屋で酒販売のアルバイトをし、早稲田大学で学んだ『実るほど頭を垂れる稲穂かな』の精神を常に貫いた謙虚な人生を送っていらっしゃいます。ご長女の誕生の時は前から決めていた「実穂」さんというお名前を付けたのもここからきているそうです。
安田さんはアイユーメモリーの会員になっていただいておりますが今日は安田さんの[人生のしまいかた]についてお伺いいたしました。
60歳になったら、ご家族の為に<遺言書>を書くつもりだそうです。
まず父親の亡くなった60歳、その次は母親の亡くなった年までを目標に一生野球に関って人生を閉じたい。野球を愛し幸せな人生を野球から戴いたので恩返しをしたいと子供達に野球を教えていますが、子供達と野球をしている時にパタッと倒れて亡くなる・・・・そんな安田さんいわくピンコロの死に方が理想だということです。
もしシーズン中に亡くなるような事があったら、けして球界に迷惑をかけないようにシーズン明けまで待ってお葬式をして欲しいというご希望です。
浄土宗の京都の本山光明寺に「のどぼとけ」をおさめて、あとは富士山にでも遺骨を撒いてくれればいーな・・・なんて想っているそうです。
手を見せていただきましたが、あの素晴らしい成績、四球を殆ど出さなかったというコントロール、王選手の世界記録の756本塁打にあと1本と迫ってからの7打数ノーヒットに押さえ込んだ「パラシュートボール」のあの攻めがこの小さな手から生まれたという事は並みの努力ではないし、優しい目の奥に光る物は、今時の野球選手とは一味も二味も違うものを持っている人だと痛感し、遅ればせながらファンの一人になっていました。



安田  猛さん  プロフィール


1947年4月25日生  58歳
小倉高校出身  早稲田大学  大昭和製紙
1971年ドラフト6位  ヤクルト入団
773試合93勝80敗  17セーブ
1972年新人王・72年73年最優秀防御率
被本塁打154本奪三振655防御率3.26
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「小さな大打者」といえばもちろん若松勉だが、当時ヤクルトにはもう一人小さな男がいた。手足が短く、マウンドに上がる時はチョコチョコと歩く姿から『ペンギン』とニックネームがついた。
早大時代は左のエースー小坂敏彦(69年ドラフト1位読売)大昭和製紙では早大の2年先輩、三輪田勝利(阪急投手)がいた。常に二番手の人生だったから、自らを「超二流の投手」と呼ぶ。しかし一流だったはずの小坂、三輪田はプロでは大成できなかった。逆に安田は二番手であったおかげで<味をだせた>のかもしれない。ヤクルトに入っても、松岡弘が右の本格派エースとして君臨していた。
意外にアマ時代に二番手の投手は何故かプロで大成する事が多い。エースの陰で埋もれる逆境から何か特異なものを学ぶのか、いわゆる本格派とは違う個性を持った投手が多く、多彩な変化球で打者を斬るひとクセもふたクセもある「味のある投手」になっている。安田の変化球は「七色の魔球」と呼ばれ、ストレートだけでも3段階の速さで投げこむ。打者を食ったように投げる超スローカーブ、そしてスライダー。

1年目は新人王そして2年連続で最優秀防御率のタイトルを獲得。以後16勝・14勝・17勝と勝ち星を積み重ね78年のユマキャンプで新球<パラシュートボール>を生み出した。チェンジアップの変形で揺れながら外角にまさしくパラシュートのように落ちた。この年15勝、球団は史上初の優勝を成し遂げた。

あれだけ打者の心理を読みぬいて投げる投手は居ない。投手はスピードだけではないという事を教えてくれた、当時ヤクルトのコーチだった森昌彦は語った。しかし小さな体で頑張り続けた安田に肘痛が襲う。「小さな人間が大きな人間に勝つ為には、それだけハンディを克服する必要があります。でも小さな人間しか味わえない満足感もあります」通算93勝は小さな男の「大きく偉大な勲章」であることは間違いない。




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